1−1−1 金融商品取引法の概要

  1. 金融とは
  2. 金融市場の分類
  3. 金融商品と規制法令
  4. 金融商品取引法の内容

1.金融とは

さて、「金融」とは何でしょうか。

一般的には、資金余剰部門から資金不足部門に資金を融通することを意味します。また、資金を融通する場のことを広い意味で「金融市場」と呼んでいます。

このように、資金を必要としているところに資金が供給されるようにする仕組みは、古くから銀行業のかたちで営まれてきました。近年では、株式や債券を発行して直接資金を調達する仕組みも整えられています。

2.金融市場の分類

銀行業のように、金融機関が資金余剰部門(貸手)からいったん資金を預かり、それを資金不足部門(借手)に融通する形態を間接金融と言います。一方、株式のように金融機関を経由せずに直接資金を融通する形態を直接金融と言います(※1)。

間接金融と直接金融は、いずれも金融市場を通じて資金を融通することは共通していますが、資金融通に伴うリスクをどこが負担するか、という点において大きく異なっています。

具体的には、融通された資金を借手(資金不足部門)が返済できなくなる、借手が存続できなくなる、もしくは借手への資金融通に伴って取得した証券の価値が下落したといった場合、間接金融の場合には経由した金融機関がリスクを負いますが、直接金融の場合には貸手(資金余剰部門)がそのリスクを負うことになります。

なお、間接金融が行われる場を金融市場、直接金融が行われる場を資本市場、と呼ぶことがあります。この場合、金融市場全体を「広義の金融市場」、間接金融が行われる場を「狭義の金融市場」と呼んで区別しています。

また、資本市場のうち、借手(企業)が貸手(投資家)に対して有価証券を発行して資金調達を行う場のことを、発行市場と呼びます。投資家はその有価証券を保持し続けるほか、売却して投資を回収する仕組みが必要です。そのような場を、流通市場と呼びます。

3.金融商品と規制法令

では、金融商品取引法の「金融商品」は、何を指すのでしょうか。

広義の金融市場では、預金、保険、株式などの「金融商品」が取り扱われます。それらを規制する法令も、銀行法、保険業法、信託業法など、金融商品取引法以外にも様々なものがあります。主なものを簡単にまとめてみると、以下のようになります。

金融の分類金融市場(広義)の分類金融商品の種類規制法令
間接金融金融市場(狭義)預金、保険など民法、銀行法、保険業法など
直接金融資本市場株式、社債、投資信託、ファンド、デリバティブなど金融商品取引法

このようにまとめてみると、金融商品取引法は、広い意味の金融市場で取り扱われている金融商品のすべてを対象としているのではなく、そのうちの資本市場すなわちリスクが相対的に高い直接金融の場で取り扱われている商品を対象としている、ということがわかります(※2)。

4.金融商品取引法の内容

金融商品取引法の主な内容は、以下のとおりです。

No.内容金融商品取引法の主な章
1目的、用語の定義第一章 総則
2企業内容開示制度(ディスクロージャー制度)第二章 企業内容等の開示
3金融商品を取り扱う業者や市場の規制第三章 金融商品取引業者等
第四章 金融商品取引業協会
第五章 金融商品取引所
4不公正取引の禁止第六章 有価証券の取引等に関する規制
5その他第七章 雑則
第八章 罰則
第九章 犯則事件の調査等

資本市場においては、借手の情報が貸手に質・量とも十分に伝達され、借手が発行する金融商品の価値が正しく評価されることが重要です。情報が不足していたり誤った情報が伝達されると、適正な投資意思決定が行われず、金融資源が適切に(経済学的に言えば、効率的に)配分されなくなります。そのため、借手である有価証券の発行者に、投資意思決定に必要な情報を開示させる規制を設けています(2の企業内容開示制度)。

また、資本市場において金融商品を取り扱う証券会社などの業者や証券取引所などの市場を規制し、投資家の利益を守ることも重要です(3の業者・市場規制)。

さらに、インサイダー取引や相場操縦といった不公正な取引が行われないように規制をかけることによって、投資家にとって公平な市場となるようにしています(4の不公正取引の禁止)。


(※1)ガーレイ&ショーによる分類です。

(※2)間接金融であっても、たとえば、銀行法が対象とする外貨建預金やデリバティブ預金、保険業法が対象とする変額保険など、リスクの高い金融商品は存在しています。